リル・ウェインやDJドラマとの共演や数々のミックステープのリリース、そしてトレイ・ソングス、グッチ・メイン、フロー・ライダーらをフィーチャーしたストリート・クラシック“Love For Money”で知られるウィリー・ザ・キッドの配信限定アルバムが、日本独自企画盤として本日リリース!そして今回はインタビューも敢行し、アルバムについて語ってもらった。
—ミシガン州のグランド・ラピッズ出身ということですが、地元のヒップホップ・シーンはどんな感じですか?ミシガンというと、エミネムやJ・ディラを輩出した都市、デトロイトの方がクローズアップされがちですが…。
W:そうだね。デトロイトの真逆に位置してるんだけど、ヒップホップ・シーンに限って言うなら(デトロイトとは)全然違うね。より幅広いアーティストがいるよ。ウエッサイぽいヤツや、NYシーンに影響されてるヤツ、サウスのノリなやつだっているし。
—今回のアルバム、『THE FLY 2.0』にもグランド・ラピッズのアーティスト、トークン・ブラック・ポエットが参加していますね。
W:そう。彼には今回、ポエトリー・リーディングという形で参加してもらったんだ。普段はラップもするよ。彼はとくにコンシャスな意見を持ったアーティストなんだ。だからオレの作品には絶対に参加して欲しかった。オレは自分がアーティストとして活動すると同時に、どんどんグランド・ラピッズの有望なアーティストを紹介していきたいと思ってる。他にもいいDJだって沢山いるんだ。
—そもそも、ラップをはじめたきっかけは何だったのでしょうか?お父さんがDJ、お兄さんがウータン・クラン・クルーのメンバーという特殊な環境も影響していると思うのですが。
W:父親はDJっていうより、レコード・コレクターって感じかな。近所の誰よりも新譜を入手して、時間と金をオーディオ機器に費やしてたんだ。ターンテーブルを買ったり、レコードを揃えたりね。子供の頃から、父さんの部屋でラン・DMCやLL・クール・J、ビッグ・ダディ・ケインなんかのレコードを漁ってた。あとはザップ&ロジャーやギャップ・バンド、リック・ジェイムスなんかも好きだったな。2歳くらいのときに、EPMDのレコードをかけながらラップの真似をしてたのを覚えてるよ(笑)
兄貴はオレと離れてNYに住んでたんだけど、電話で「レイクォンとコラボしてる」って聞かされたときは驚いたね。オレ自身、部屋にはウータンのポスターやステッカーが溢れてるくらいの大ファンだったから。兄貴のツテで、レイクォンと話す機会があったんだけど、そのときに決意したんだ。「オレもラップでみんなのことをロックしたい」ってね。グランド・ラピッズの小さなガキだったけど、ラップだったらオレに大きなチャンスを与えてくれるんじゃないかと思ったんだ。
—そのあと、大学進学と同時にアトランタに拠点を移して、DJドラマ達とともに活動を広げていきましたよね。アトランタに移ったのはなぜ?
W:アトランタにいきたい大学があったからさ。あとは、もともとサウスのラップが大好きだったんだ。グッディ・モブにアウトキャスト、スカーフェイスとかゲトー・ボーイズとかね。とくに”Player’s Ball”のPVに出てくるアンドレの格好が大好きで、アトランタ・ブレーヴスのベースボールTシャツにカンゴールのキャスケットを合わせるスタイルはよく真似してたよ(笑)。
—DJドラマとの活動はどうでしたか?ミックステープ・シーンの興隆期に彼と活動していたのはとても印象深いです。
W:もともとは(ドラマのパートナーの)DJドン・キャノンとの出会いが先だった。オレは当時、楽曲制作に励む大学生って感じで、キャノンもドラマも全然今みたいに有名じゃなかったんだ。そのうち、キャノンがビートを作ってドラマが色んなサウスのラッパーをフックアップして、ミックステープって形に仕上げて売り始めたんだ。みるみるうちに二人は有名になった。でも、オレと二人の関係性が変わったわけじゃないから、そのまま三人でオレの作品作りを続けたのさ。オレの兄貴も共同で、みんなでレーベル運営をしていたから色んなことが学べたよ。
—そのあと、ドラマと離れて独自のプロジェクトを発足したわけですが、今回リリースされた『THE FLY 2.0』は一つの到達点という感じがします。ずばり、コンセプトは何でしょうか?
W:
—なるほど。ファースト・アルバムとは、がらっと作風が変わっていますよね。サウスらしいバウンス・チューンが多かったけど、バンドっぽいサウンドだったり、ちょっとダークな作品もあったり。
W:確かに、それはすごく意識したことなんだ。ドラマと離れたあと、自分は一人のアーティストだってことをより意識するようになった。確かに以前はグッチ・メインやT.Iとか大物達とコラボもさせてもらったけど、それは本当にオレのやりたいスタイルなのか?って考えたんだ。客演のラッパー達の名前負けするようじゃイヤだし、自分一人の力でどこまで実力を発揮出来るかってことに重点を置いた。だからリリックもより哲学的になっているし、パーソナルな気持をラップするように心がけたんだ。
周りには似たような曲が溢れてるけど、そんな中でアーティストとしてオリジナリティを保つには、とにかく気をつけなきゃいけないと思ってる。J・ディラが生前に言っていた言葉で、<創造力を高めるために他のアーティストの曲を聴いてインスパイアされるのはいいけど、それだけじゃだめだ。そこから自分らしい作品を創り出さないと>ってのがあるんだけど、本当にその通りだと思うよ。いつまでも自分の信念をもったアーティストでいたいからね。
アーティスト: ウィリー・ザ・キッド
タイトル: ザ・フライ2.0 – ジャパン・エディション -<
フォーマット: CD
品番: PCD-22353
販売価格: 2,310円 (税抜価格 2,200円)
発売予定日: 2011年10月19日(世界初CD化/日本特別企画盤)
ジャンル: ヒップホップ
Interview & Text:Shiho Watanabe
撮影協力:TIKATIKA CASTLE/BAYSIDE YOKOHAMA www.tikatikacastle.jp